
■ 残したい日本の音風景100選
出典
環境庁大気保全局大気生活環境室は、平成8年に日本各地の音環境を保全することに意義がある音風景として100を認定しました。北海道・東北

●オホーツク海の流氷
白一色の流氷原から聞こえる神秘の音、大自然のささやき
所在地
北海道オホーツク海沿岸
よく聞ける時期
1月下旬から3月中旬ごろ
よく聞けるところ
枝幸町ウスタイベ千畳岩。網走市北浜海岸ほかオホーツク海沿岸一帯。
解説
冬の北海道を代表する風物詩,流氷を唯一見ることができるのがオホーツク海である。
毎年11月中旬ごろ,シベリア大陸を流れるアムール川の真水がオホーツク海へ流出する際,河口で塩分のうすい海水層を形成し,シベリアからの寒気にさらされて氷の結晶となる。それが海流によって南下する際,厳寒の風に吹かれて除々に成長しながら,やがて北海道のオホーツク沖合に1月中旬ごろ姿を現わし,流氷初日が観測される。
1月から4月までの約3ケ月間接岸した流氷によってオホーツク海沿岸は,見渡す限り白一色の氷の世界に変貌する。寒さの中,浜辺で耳を澄ませると,流氷のせめぎ合う不思議な音が聞こえてくる。
北の街に時を告げる、ロマンあふれる鐘の音色
所在地
北海道札幌市
よく聞ける時期
1年を通して聞ける
よく聞けるところ
時計台の周辺
解説
札幌のシンボルとして市民に親しまれているこの時計台は,旧札幌農学校(北海道大学の前身)の演武場として明治11年(1878)に建築された洋風建築で,現存する時計塔としては日本最古のもの。塔上の時計はアメリカ製で当時,時計台の時を告げる鐘は,4キロ四方にわたって鳴り響いたという。
今では,周囲をビルに囲まれて,鐘の音はほとんど周辺にだけしか聞こえなくなってしまったが,鐘そのものの音は,明治の昔と変わらない音色を奏でている。時代の流れとともに,近代的な大都会へと様相を変えた札幌の街にあって,草創期の面影をそのままにとどめている時計台の姿は,その鐘の音とともに悠久の時を越えて,私たちの心を魅了してくれる,歴史的文化的音色である。
異国情緒あふれる町並みに響きわたる−−余韻のひととき
所在地
北海道函館市
よく聞ける時期
土曜日の夕刻と日曜日の午前
よく聞けるところ
教会およびその周辺
解説
ハリストス正教会は,初代ロシア領事館附属聖堂として安政6年(1859)に建てられたのが始まり。現在の建物は大正5年(1916)に建設されたものである。
ロシア司祭ニコライが日本にはじめて伝えたとされるギリシャ正教の由緒あるこの教会は,白い壁に青緑の尖塔をあしらったビザンチン様式の優美な外観が印象的で,観光客の目をひときわ引きつける。さらに,市民からも「ガンガン寺」の愛称で親しまれ,函館のシンボルとして,国の重要文化財に指定されている。
その鐘は,オルゴールのようなメロディのある独特の明るい音色を響かせ,港を見下ろす異国情緒あふれる元町一帯の景色とともに,訪れる人々に憩いのひとときと安らぎを与えている。
天上の大自然の楽園でさえずる小天使たちの歌声
所在地
北海道東川町
よく聞ける時期
4月から6月末の早朝
よく聞けるところ
旭岳温泉街にある自然探勝路
解説
アイヌの人たちが「神々の遊ぶ庭」と呼んだ大雪山国立公園は,全国的にも数少ない,手つかずの大自然が残るエリアである。高山植物や野鳥,動物,昆虫たちが四季折々の美しい大自然の中で息づいている。
その主峰旭岳(2290メートル)の山麓に設けられたコマクサコース,見晴台コース,クマゲラコース,ナナカマドコースの4つの自然探勝路では,気軽に大雪の自然探索が楽しめる。ここでは,氷河期の生き残りといわれる珍しいナキウサギの声や,コマドリ,ミソサザイ,ルリビタキなど多くの野鳥の声を聞くことができる。
特に4月から6月末にかけて,巣づくりにはげむ野鳥の美しいさえずりが多く聞かれ,訪れる人をなごませてくれる。
その姿、その声に、願わずにいられない永遠の詩
所在地
北海道鶴居村
よく聞ける時期
毎年10月下旬から3月中旬まで
よく聞けるところ
鶴居伊藤タンチョウサンクチュアリ,鶴見台
解説
鶴居のタンチョウサンクチュアリは,市街近郊にありながら,北国らしい田園風景が漂う。
一時絶滅が心配された特別天然記念物で,北海道の鳥にも指定されているタンチョウが,この地に見られるようになったのは,地元や地域住民の懸命な保護活動のおかげである。今では,冬期間二百羽を越えるタンチョウが飛来してくる。
純白と黒のコントラストに赤いベレー帽を被せたような気品高い美しさとともに,つがいが鳴きあう声や若鳥の声,北キツネやエゾシカを警戒する声など,目と耳を同時に楽しませてくれる。時には優雅に,時には激しく鳴く声は生命力に満ちあふれ,華麗な求愛ダンスは,見る人に深い感動さえ与えてくれる。
早春に戻り秋には南へ飛び立つウミネコの大合唱
所在地
青森県八戸市
よく聞ける時期
毎年3月から7月ごろ
よく聞けるところ
蕪島とその周辺の港
解説
蕪島はウミネコの繁殖地として大正11年(1922),国の天然記念物に指定され,以来八戸市の代表的な観光地となった。
島と陸地との間は現在,埋め立てられて陸続きになっており,その西側には東北有数の機能を有する八戸港がある。
音の主役である「ウミネコ」は,毎年2月下旬ごろに南方から飛来し始め,島に蕪の花が咲くころは,数万羽が島にやって来て産卵する。成長したヒナが巣立つ7月ごろまで島と港の上空は,彼らと,その命名の由来である「ミャーミャー」というネコに似た鳴き声に終日おおわれる。
そして秋には再び南へ旅立ち,島周辺は,にぎわいに別れを告げ静かな時を迎える。
絶滅危急種の野鳥たちが集まる北の湖畔
所在地
青森県三沢市
よく聞ける時期
5月下旬から7月上旬
よく聞けるところ
小川原湖畔北東部(仏沼地区)
解説
三沢市北東部の小川原湖畔に広がるヨシ原の海から,国内稀少野生動物種のオオセッカが「ビジョ,ビジョ」と声高らかに舞い上がる。稀少種のコジュリンは「ピッチリリピツゥ,ピチョ」とさえずり,オオジンギは,ガッガッガッと羽音を立てて上空から急降下してくる。ヨシ原の主,コヨシキリやクイナが「ケケシ,ケケシ,ジョッピリリ」「チック,チック」と八甲田連峰を背にしてさえずるコーラスは,独特のすがすがしさを演出する。
湖畔の仏沼地区は,オオセッカの世界的な繁殖地の一つで,チョウヒやハッチョウトンボをはじめとする絶滅危急種の生息が確認されるなど,渡り鳥の中継地でもある。
野生の生き物たちと間近に感動的な出会いのできる数少ない湖畔のひとつだ。
深いブナの林を抜けて悠久の時が育んだ清流のハーモニー
所在地
青森県十和田市
よく聞ける時期
5月から10月へかけて
よく聞けるところ
馬門橋上流や阿修羅の流れ付近
解説
奥入瀬渓流は,青森県十和田湖畔の子ノ口に端を発し,焼山にいたる約14キロの流れである。それは,わが国屈指の景勝地として国の特別名勝・天然記念物にも指定されている。
変化に富んだ流れと,それぞれに異なった姿を見せる数多くの滝に加え,さまざまな奇岩,奇勝と原始の地球から育ってきたブナ原生林の木立とが,優雅にして清冽な渓流の自然美を構成している。
千変万化の美しい渓流の流れは,時には繊細に,時には激しく鼓動し,豊かな水のシンフォニーを聞かせてくれる。四季折々に衣替えする奥入瀬だが,新緑や紅葉の季節は,とくにみごとな景観で,さわやかな音風景を併せて堪能できる至福の場所となる。
「ヤーヤドー」太鼓に負けぬ掛け声と笛の音色
所在地
青森県青森市,弘前市
よく聞ける時期
青森ねぶた---8月2日,3日は午後6時50分〜9時30分。4日〜6日は午後6時30分〜9時30分。7日は午後12時45分〜3時まで。
弘前ねぷた---8月1日〜6日は夕方から夜,7日は午前10時〜11時まで。
よく聞けるところ
青森ねぶた---アスパム周辺
弘前ねぷた---8月1日〜4日,7日は土手町。8月5日〜6日は弘前駅前。
解説
夏が近づくと,祭りの囃子は街のいたるところから流れてくる。
青森市のねぶた祭は,大きな人形ねぶたを囲んで,七節で構成されるお囃子と「ラッセラー・ラッセラー・ラッセ・ラッセ・ラッセラー」の掛け声で「ハネト(踊り子)」が乱舞し,ねぶたに魂の火が灯る。
一方,ねぶた祭より歴史深い弘前市のねぷたまつりでは,「ヤーヤドー」の勇ましい掛け声で,扇形のねぷたが街を練り歩く。
どちらも,人それぞれの思いが爆発するかのような掛け声,豪快なまでに魂を揺さぶる太鼓の音,哀調を帯びた笛の音色で,北国の短い夏にかける人々の情熱は,見るものを圧倒せずにはおかない。
打ち寄せる波を切り裂く、足がすくむような轟音
所在地
岩手県大船渡市
よく聞ける時期
波の静かな日を除いて,季節や時期に関係なく,いつでも聞くことができる。
よく聞けるところ
乱曝谷から雷岩の正面のあたりが一番よく聞こえるが,かなり離れた場所でも聞ける。
解説
陸中海岸国立公園の中に位置する碁石海岸は,大船渡湾より突き出した末崎半島南端のリアス式海岸である。
碁石海岸という呼び名の通り浜辺には碁石状の黒く平たい小石が,一面に敷き詰めたようにひろがっている。波で美しく磨かれた浜辺の石は実に印象的だ。
碁石浜からは遊歩道がめぐり,松林をぬけると,荒々しい豪快な風景が展開する乱曝谷に突き当たる。切り立った岩肌に洞門や洞穴があちこちに見られる。
ここで「ドーン」と,足が立ちすくむような巨大な音が響きわたる。カミナリにも似たこの音の発生源は眼下の雷岩だ。洞穴に押し寄せた波が空気を圧縮し,雷鳴のように轟いている。自然の成す悪戯といえようか。
風が運んでくる爽やかな夏のハーモニー
所在地
岩手県奥州市
よく聞ける時期
毎年6月1日〜8月31日
よく聞けるところ
JR東北本線水沢駅ホーム内
解説
九百年の歴史を誇る南部鉄器のふるさと水沢市。JR東北本線水沢駅ホームに,毎年6月から8月にかけて当地で製作された南部風鈴がたくさん飾られ,さわやかでかわいらしいハーモニーを奏でている。
昭和38年(1963)年から毎年行われている行事で,これをきっかけに風鈴ブームが到来,水沢駅は「風鈴駅」とも呼ばれるようになった。その風鈴も今では,以前からの吊鐘型,松笠型,灯籠型などに加え,果物,野菜,花シリーズや棒型などのユニークな型で,音色だけでなく見るのも楽しい。
なにかとあわただしい駅風景を和ませ,乗降客に安らぎを与えてくれると評判を呼んでいる。
村人に愛されてきた歴史深い馬コの鈴の音
所在地
岩手県滝沢村
よく聞ける時期
毎年6月15日の午前6時から11時
よく聞けるところ
蒼前神社(駒形神社)とその周辺
解説
みちのく岩手に,初夏のさわやかな風が伝わる季節,「シャグシャグ」の鈴の音も軽やかに,色とりどりの装束をつけた百頭余りの馬コが,馬の氏神を祀った滝沢村の蒼前神社に集まってくる。
参拝をすませた馬コたちは,15キロの道のりを行進。道中,岩手山を背景に,馬コに着けられた大小の「シャグシャグ,チャグチャグ」の鈴は鳴り止まない。この勇ましくもあり,愛らしくもあり,にぎやかに鳴り響く音色から,チャグチャグ馬コの名が生まれ,人々に親しまれてきた。
奈良時代から,馬の名産地として大切にしてきた伝統の歴史が,毎年6月15日,馬コの鈴の音とヒヅメの音がまじり合って現代に伝えている。
耳に心地よく、心やすらぐ鈴虫の調べ
所在地
宮城県仙台市
よく聞ける時期
立秋過ぎから晩秋の霜の降りる前までの時期
よく聞けるところ
高森山,枡江の森,鶴ヶ谷中央公園
解説
仙台市は「杜の都」といわれる。青葉通や定禅寺通の大きなケヤキ並木の大トンネル。伊達藩六十二万石の仙台城跡は別名青葉城といわれたほど緑が多い。広瀬川畔の西公園,市内中心部の勾当台公園,そして仙台駅東側のつつじが岡公園など,大都市としては圧倒的に緑が多い。
緑が多ければ自然環境も保たれる。花木鳥虫は人間にとっても「命のふるさと」だ。そこで「新しい杜の都づくり宮城野区協議会」は,市虫「スズ虫」でまちづくりをさらに自然豊かなものにしようと努力している。
スズムシは,古(いにしえ)の宮城野を感じさせている風流文化の原点である。スズムシの鳴き声が澄めば澄むほど,仙台宮城野の自然も豊かなのである。
川のせせらぎの中に生きるカジカガエルと野鳥たち
所在地
宮城県仙台市
よく聞ける時期
カジカガエルは5月末から8月まで(とりわけ,早朝/夕刻)。野鳥は四季折々。
よく聞けるところ
大橋から花壇を抜けて評定河原橋にいたる河川敷。
解説
仙台市の中心部から1〜2キロほどの広瀬川の河原に,向かい側の岸がちょうど切り立った岸壁となっていて,せせらぎと川に集う鳥の鳴き声などが,こだまとなって響き合うところがある。
四季折々に,野鳥などの声が聞かれるが,とくに夏から秋にかけてはカワセミの「ツィー,ツィー」という声や,弓なりの翼を「ツー,バタバタ」と動かすチョウゲンボウなどで賑やかだ。5月末から8月までは,カジカガエルの「フイフイ---」という鳴き声を聞くこともできる。
早朝や夕刻,川のすぐそばでないとそれらの音はよく聞こえないが,ダイナミックな活動が営まれる都心部に接するこの地で,大変豊かな自然を味わうことができるのは,文字どおり都会のオアシスの広瀬川ならではのことである。
春はみどりの風、冬は黄金色の風が美しい旋律を奏でる。
所在地
宮城県石巻市
よく聞ける時期
4月から12月ごろまで
よく聞けるところ
北上大橋付近
解説
東北随一の大河,北上川は全長249キロを悠々と流れて一部は石巻湾に注ぎ,一部は河北町から東流して追波川となり,北上町で南三陸の追波湾に注ぐ。
この北上川流域は豊富で多様な生物相と豊かな水をたたえ,広い開放的な空間を形づくっている。
とくに河口から上流10キロまでの高水敷は,「ヨシ」の群落が広がる「ヨシ原」を形成し,川面を渡る風がヨシのすれ合う音を誘い,風の強弱に合わせていろいろな音色を醸し出し,水鳥の鳴き声とのハーモニーが何ともいえずすばらしい。
広大なヨシ原にはオオヨシキリ,コヨシキリ,カルガモ,オオバンなど,野鳥の宝庫だ。
毎年冬になると地元民による昔ながらのヨシ刈りが行われて風物詩になっている。
日の出とともに飛び立つマガンの大群
所在地
宮城県栗原市,登米市
よく聞ける時期
10月中旬から2月下旬,とくに日の出,日の入りの時刻
よく聞けるところ
伊豆沼---獅子ケ鼻県堤ほか
内沼---八沢県堤ほか
解説
雁が鈎になり竿になって渡る風景は,かつては日本のどこでも見ることができた風景である。
宮城県の伊豆沼・内沼は,マガンをはじめ,たくさんのガンが越冬する湖沼である。飛来数は年々増える傾向で,平成9年1月には,1万4千羽を数えている。
伊豆沼・内沼をねぐらにしたマガンの大群は朝,日の出とともにいっせいに飛び立って,周辺の水田に採餌に向かう。
この時の羽ばたき音や鳴き声をともなう光景は,まさに壮観,だれもが自然と生き物の素晴しさを感ぜずにはいられない時空がそこにある。
日本海から吹き入る潮風と松林とのすばらしい協和音
所在地
秋田県能代市
よく聞ける時期
1年を通じて聞ける(市街地の喧騒が聞こえない早朝がおすすめ)
よく聞けるところ
風の松原全域。市街地(東側)に近いほど黒松の樹齢が古く,視覚,聴覚を通して重厚な松籟が楽しめる。
解説
能代市街地をやさしく包み込んでいる黒松林の「風の松原」は,秋田県の北西部に位置する能代海岸砂防林の愛称である。その規模は南北14キロにわたってつづく松林で,日本の五大松原の一つにかぞえられている。
日本海から吹きつける潮風(北西風)と飛砂に背を向けて同じように傾く松林は,砂防林の役目を十分に果たすとともに,四季折々の散策,くつろぎの場,憩いの場として,市民生活と深い関わりを持っている。
黒松林を吹き抜ける風に枝々がいっせいにざわめき,風の音と松の音が渾然一体となって「松籟」という音風景をつくりだす。季節,場所,樹齢によって微妙に違う松籟はまさに千変万化である。
芭蕉も訪れた山寺の盛大な蝉しぐれを
所在地
山形県山形市
よく聞ける時期
7月中旬から8月中旬
よく聞けるところ
「せみ塚」付近,「五大堂」から奥の方など(道路からの交通音などが聞こえないようなところがいい)
解説
山寺の名で親しまれている宝珠山立石寺は,慈覚大師によって開かれた比叡山延暦寺の別院で,東北の霊場として厚い信仰を集めている。
山門をくぐると,1100余段の石段が奥の院如法堂まで続き,まわりは杉や松などでうっそうたる林だ。途中,姥堂を過ぎると蝉塚に着く。
今から約300年前,俳聖松尾芭蕉がこの山寺を訪れ,その荘厳な景観美に感銘を受けて,「閑かさや岩にしみ入る蝉の声」と詠み,『奥の細道』の名句としてこれまで伝えられている。
今でも,梅雨が明け暑い夏を迎えると,その「山寺の蝉の声」は,山寺の山中に響きわたっている。
法螺貝の音色が家内安全を祈る、師走の風物詩
所在地
山形県鶴岡市
よく聞ける時期
12月1日から中旬
よく聞けるところ
12月1日,日枝神社
12月中旬,市内
解説
大晦日から元旦にかけて羽黒山頂で繰り広げられる,出羽三山神社の三大祭りのひとつ「松例祭」。その浄財を集めるために行われる伝統行事が「松の勧進」だ。
毎年12月1日,市内の日枝神社に羽黒山の山伏が集結し,参拝後に旧庄内藩主の酒井家に城下を勧進するあいさつをする。
山伏たちは,法螺貝の「ぶぉ〜,ぐぶぉ〜」という,なにかを呼び起こすような音を響かせながら,家内安全などを祈ったお礼を各家庭に配り歩く。
山伏の姿と法螺貝の音は,12月中旬まで,市街地のいたるところで出会うことができ,鶴岡に師走の訪れを告げる,伝統的な風物詩となっている。
最上川河口に集う白鳥たちの鳴き声
所在地
山形県酒田市
よく聞ける時期
毎年10月(上旬)の第一陣の飛来から,北帰行の終わる4月(上旬)まで。
よく聞けるところ
最上川スワンパーク(最上川河川公園内出羽大橋近く)
解説
最上川は,「五月雨を集めて早し最上川」と俳聖松尾芭蕉の『奥の細道』でも詠まれているように,北に鳥海山,南に月山の雄峰を仰ぎ,堂々とそそぐ日本三大急流の一つとして知られている。
日本一の白鳥の飛来地である最上川スワンパークは,出羽大橋上流200メートルのところにあり,粉雪舞う最上川河口に白鳥が飛来したのは,大正初期からといわれている。
昭和47年(1972)に鳥獣保護区に指定され,以来毎年白鳥たちはそこに集まり,最上川を喜び,満喫するかのような鳴き声を上げる。平成7年度には,6千余羽の白鳥が飛来して,さらに脚光をあびている。
鳥たちの声を伴奏に森を散策
所在地
福島県福島市
よく聞ける時期
4月から6月
よく聞けるところ
野鳥の種類によって,よく聞ける場所がある。シジュウカラの小径,カワセミの小径などの観察路。
解説
福島市の小鳥の森は,福島盆地の東部,阿武隈山地西端の標高60〜250メートルの樹木豊かな丘の上にあり,年間約90種の野鳥が観察できる。とくに春から夏にかけては,シジュウカラの「ツーピー,ツーピー」という声や,ホトトギスの「テッペンカケタカ」をはじめ,サンコウチョウの「ツキヒホシ,ホイホイホイ」という一風変わったさえずりなども楽しい。
ここのネイチャーセンターでは,専任レンジャーによる野鳥や自然についての説明が受けられ,樹間には観察道路がつけられているので,森に響く小鳥たちのさえずりを聞きながら散策しよう。また,センターでは,このあたりの農村の里山風景と自然環境の保全をすすめている。
ひっそりとたたずむ村を支える自然用水の清らかな流れ
所在地
福島県下郷町
よく聞ける時期
1年中,いつでも
よく聞けるところ
大内宿全域
解説
ここ大内宿は江戸時代の宿場を今に残す,全国でも数少ない集落の一つ。
この大内宿を通る街道は,会津街道または南山通りと呼ばれ,城下町会津若松と栃木県今市を結ぶ。その昔,参勤交代の大名行列や数万俵の迴米などのほか,旅人なども通る交通要所だった。その会津西街道沿いに用水路があり,山からの自然水を取り入れ,生活用水として利用されてきた。
山間にひっそりとたたずむ大内宿は,昭和56年(1981)に国の重要伝統的建造物群保存地区に選定され,江戸時代の町並みが再現されている。
江戸時代から現代まで,大内宿の人々の生活を支えている自然用水の流れは,その町並みと共に旅びとを数百年前のタイムトリップに誘ってくれる。
奥会津の山里で静かに奏でられるはた織りの音
所在地
福島県昭和村
よく聞ける時期
1年中いつでも,とくに冬期間は周辺の雪との調和がとれて,静寂の中からの音がよい。
よく聞けるところ
からむし会館。
冬期間は農家でも聞ける。
解説
昭和村には,本州唯一のからむし栽培地として六百有余年にもわたる歴史があり,以前はからむし織の機織りの音は村内各農家から聞こえていた。昔から「からむしは絶やすな」と言い継がれている。からむし(苧麻または青苧)とはイラクサ科の多年草で,茎の皮から繊維をとり,手仕事で糸をつくる。
各農家からの機織りの音は少なくなったが,「からむし会館」などの施設で織子や全国から集まった織姫たちが作業しているので,機織りの音はいつでも聞くことができる。
奥会津の山里の四季折々の風光の中で,古代布からむし織の「カラカラ,トントン…」という悠久のリズム音が今日も静かに響いている。
関東

●五浦海岸の波音
深く入り組む海岸に砕け散る波の音のハーモニー
所在地
茨城県北茨城市
よく聞ける時期
1年中聞こえるが,とくに波の荒い冬場がいい。
よく聞けるところ
六角堂周辺や遊歩道をすすんだ断崖
解説
茨城県北部の五浦海岸は,緑の松林を背景に五つの入り江が開け,明治39年(1906)に日本近代美術の父である岡倉天心が日本美術院の本拠を移し,横山大観や下村観山らと作画活動を行った地である。
海に突き出た断崖の上には,天心が建てた六角堂がある。彼はここで太平洋を眺め,波の音を聞きながら思索したという。
「五浦海岸の波音」とは,六角堂周辺の断崖と,太平洋から打ち寄せる波とがぶつかる音で,時にはやさしく,時には激しく,その時々の自分の心を表しているように聴こえる。断崖に砕け散る波しぶきや,小さな貝を運んでは引いていく波の音,松林をわたる風の音が共鳴する自然の音のハーモニーは,まことに心地よい。
あじさいの影に聞く、にきやかな雨蛙の大合唱!
所在地
栃木県栃木市
よく聞ける時期
あじさいの影に聞く,にきやかな雨蛙の大合唱!6月中旬〜7月上旬の雨どき
よく聞けるところ
あじさい坂中ほど
解説
あじさい坂は,栃木市街地にほど近い太平山のふもとから山頂の太平山神社に至る表参道で,1000段の石段がつづいている。この両側には,西洋あじさいをはじめ,額あじさいや山あじさいなど,約2500株もの大輪が色とりどりに咲きそろい,シーズンには大勢の人が訪れる。
6月中旬から7月上旬にかけて梅雨空の下,やがてポツリと雨が落ちてくると,申し合わせたように,どこからともなく雨蛙の合唱が始まる。蛙たちの鳴き声は,あじさいの色の華やかさに負けじと,しだいににぎやかさを増してくる。
あじさいに落ちる雨音と蛙の声は,しっとりとした風情を楽しませてくれる
地中から響く水滴の交響楽
所在地
群馬県吉井町
よく聞ける時期
地中から響く水滴の交響楽。1年中(平日,日曜祭日の9〜17時)
よく聞けるところ
高崎芸術短期大学・高崎保育専門学校のキャンパス内(入園無料)
解説
学園のキャンパス内に,8年の歳月をかけて築造された4000坪の大庭園「水琴亭」がある。琳派風回遊式日本庭園で,園内には而生庵,艸居庵と呼ばれる二つの茶室があり,三帖台目,二帖中板目の茶室のかたわらに流れがあって,その一角に蹲居がある。そして手に水を落とすと絶妙な水琴窟の音が地中から響いてくる。
水琴亭の水琴窟の秘密は,地中に埋められた二つの瓶によってもたらされている。陰陽をなす一対の瓶が共鳴して,まれにみる深い響きを生み出す。
水滴の交響楽は,かすかな音量の中にも人々の心をとらえて離さない音の世界がある。
小江戸の町並みに今も鳴りつづける鐘の音
所在地
埼玉県川越市
よく聞ける時期
1年中,1日4回(6時,12時,15時,18時)と8月6日,9日の原爆投下の時刻と大晦日の除夜の鐘
よく聞けるところ
市街地北部。とくに幸町周辺
解説
川越は小江戸と呼ばれ,古い蔵造りの建物が並ぶ城下町だ。江戸の街とを結ぶ商人の町として栄え,明治26年(1893)の大火以来,蔵造りの建物が急増し,独特の町並みを形成するようになった。
現在も仲町から札の辻にかけての一番街周辺に,これらの建物が多く残り,道行く人を楽しませてくれる。
一番街の中心部から少し東に入ると,川越のシンボル,時の鐘がある。寛永年間(1624〜1644)に川越城主・酒井忠勝によって建てられ,三五〇年にわたり,川越に時を告げてきた。現在の鐘楼は,大火の翌年に再建されたもの。最上階につるされた鐘は,今も1日に4回,6つずつ撞かれる。音色が蔵造りの町並みに響きわたり,情緒豊かな音風景を演出している。
マツムシの声をリーダーに秋の夜長を虫の声で堪能
所在地
埼玉県江南町
よく聞ける時期
秋,とくに8月中旬から10月上旬の夜6時ごろから
よく聞けるところ
河原の草地
解説
荒川の中流,埼玉県江南町にある押切の河原は,ほとんど人の手が加えられていない自然の草地だ。南に荒川の清流,北は県営大麻生公園ゴルフ場に挟まれた河川敷で,夜鳴く昆虫が多いことでも知られている。
あたりがうす暗くなると,マツムシ,スズムシ,エゾエンマコオロギ,キリギリスなどがいっせいに鳴き出して,秋の夜長を演出する。8月中旬から10月上旬ごろまで19種類もの虫の音が聞こえてくる。
とくにマツムシが多く,「チンチロリーン,チンチロリーン」と響く鳴き声は,歩きながらも,立ち止まっても,どこにいても聞こえるほどにぎやかだ。
市民グループの観察活動や観賞会なども催されている。
橋下の用水樋からあふれ落ちる豊かな水の音
所在地
千葉県佐原市
よく聞ける時期
季節に関係なく年中,午前9時から午後4時まで30分間隔で落水。
よく聞けるところ
樋橋わきの伊能忠敬旧宅前
解説
佐原市の市街地の中央には小野川が流れていて,その周辺は江戸時代には銚子と江戸を結ぶ利根川水運の発展により,商業地区として栄えた。
その岸辺の伊能忠敬旧宅前に架けられている樋橋は,その昔,小野川を横切って水田に送水するためにつくられた。そこから水があふれ落ちる音から「じゃあじゃあ橋」と呼ばれるようになった。
しかし,時代とともに用途もなくなり,昭和30年代には水も流れ落ちなくなったが,風情ある小野川周辺の町並み保存運動と情緒ある橋を取り戻そうという市民の要望が高まったことから,落水施設が復元された。
落水は30分間隔で,1日に15回行われ,江戸の面影を今に伝えている。
セミの大合唱で、山全体がふるえるような!?
所在地
千葉県大多喜町
よく聞ける時期
7月中旬〜8月上旬
よく聞けるところ
麻綿原高原一帯
解説
千葉県の中心部に位置する大多喜町には,美しい自然が数多く残されている。町の南部の麻綿原高原は,7月中旬から8月上旬にかけて,緩やかな斜面の高原全体が20万株のアジサイで埋め尽くされる。
また,この一帯はヒメハルゼミの一大生息地で,ちょうどアジサイの開花時とヒメハルゼミの鳴く時期とが重なり,訪れる人をおおいに楽しませてくれる。
ヒメハルゼミの特徴は,単独ではミンミンゼミの声に似ているが,合唱するのが好きなので,一匹が鳴き出すと,数百,数千匹が鳴く。まるで山全体が震えるようにジャー,ジャーと大きく鳴り響き,しばらくするといっせいに鳴きやむ。
下町ならではの雑踏と江戸川の野鳥の声
所在地
千葉県松戸市
東京都葛飾区
よく聞ける時期
通年,鳥の鳴き声は四季を通して,種類は異なる。渡し船は3月中旬から11月末まで毎日,それ以外の期間の土日,祝日,帝釈天の縁日の日に出る。
よく聞けるところ
柴又帝釈天参道と江戸川河川敷。松戸側の船着場の周囲は河川敷ゴルフ場なので,船着場付近で水際に立つのがいい。
解説
寅さんのふるさとでもある柴又帝釈天の参道は,いつも参拝客で賑わっている。川魚料理屋の生簀の水の音や飴屋がトントンと飴を切る音が聞こえ,境内に入ると,梵鐘が朝,昼,夕を告げる。
江戸川に出ると,船頭さんの手漕ぎの渡し船が,150メートルの向こうの対岸へと往復する。ゆったりと流れる江戸川の水に合わせるかのように漕いで行く。
川面をすべるように対岸に向かうギーッ,ギーッと船を漕ぐ櫓の音,そして春はヒバリのさえずり,夏のオオヨシキリのやかましく鳴く声,冬にはピーピーと鳴くユリカモメなどの声が聞えてくる。四季を通じて,多くの野鳥たちが集まってくる都心に近いオアシスだ。
夕暮れ時はとくに風流。心に響く鐘の音
所在地
東京都台東区
よく聞ける時期
毎日,朝夕6時と正午
よく聞けるところ
上野公園内
解説
時の鐘は,芭蕉の句”花の雲 鐘は上野か浅草か”のモデルになったといわれている。時計のなかった江戸時代の人たちは,鐘の音で時刻を知った。当時,江戸市中には「時の鐘」が9カ所あり,時報として,2時間ごとに時を告げていた。
浅草寺にも鐘は残っているが,芭蕉が耳にしたのも,上野の山の「時の鐘」の音と伝えられている。
この「時の鐘」は寛永寺に属し,上野公園の精養軒近くの高台にある。初代の鐘は寛文六年(1666)につくられたが,現存するのは天明七年(1787)に鋳直されたもの。今でも朝夕6時と,正午の3回,昔ながらの音色を響かせ,多くの人の心を和ませている。
そっと耳を澄ませば聞こえてくる樹々のざわめき
所在地
東京都練馬区
よく聞ける時期
1年中いつでも
よく聞けるところ
公園の全域
解説
武蔵野の風趣に富み,史跡や伝説の豊かな都立石神井公園の一帯。ボート遊びなどで賑わう石神井池を過ぎ,井草通りをわたると,緑がいちだんと濃くなる。
三宝寺池は古くから湧水池として知られ,水生植物の宝庫だったところ。寒冷地植物のミツガシワや湿生地特有のカキツバタ,ハンゲショウ,コウホネなどがわずかに残り,国の天然記念物に指定されている。練馬区が区民から公募して選定した「静けさ10選」の場所でもある。
浮き島を眺めながら池をひとめぐり。樹々を飛び交う小鳥がさえずり,水鳥が泳ぐサンクチュアリになっている。風に揺れる樹々のざわめきが,静けさをいっそう感じさせてくれる。
道行く人にやさしく語りかけてくれる大木の並木みち
所在地
東京都武蔵野市
よく聞ける時期
1年中いつでも,耳を澄ませばケヤキ並木が奏でる音の風景に触れることができる。できれば早朝がおすすめ。
よく聞けるところ
並木道はおよそ500メートルつづく。幹線道路から離れる中ほどまで歩くとよい。
解説
成蹊学園のシンボルともいえるケヤキ並木は樹齢80年以上,高さ12メートルにもおよぶ古木124本が,7メートル間隔に整然と並ぶ。その美しさは比類のないものだ。
並木に立ち,目を閉じ,耳を澄ますと,四季折々,実にさまざまな「音」が聞こえてくる。春の新緑はやさしく爽やかな葉ずれ,夏は濃い緑の下のしじま,晩秋の軽やかな落ち葉の音,木枯らしが強く葉や枝をたたく初冬,また,鳥や虫たちの格好のすみかにもなっている。
都市化が進み,まちの緑もだんだん少なくなってきた武蔵野市にあって,このケヤキ並木はホッと心の和む市民のオアシスとも呼べる場所だ。
汽笛のハーモニーで1年の幕開け
所在地
神奈川県横浜市
よく聞ける時期
元旦の午前0時
よく聞けるところ
山下公園をはじめとする横浜港周辺
解説
横浜港では,大晦日の除夜の鐘のかわりに,停泊している船が,新年を迎えたお祝いの汽笛をいっせいに吹き鳴らす。
小さな遊覧船のかん高い「ピー」という音から,大きな豪華客船の,「ヴォー」「ボォー」という,お腹のなかまで揺るがすような太い音まで,それぞれ異なった音色のハーモニー。 冷たい海風を浴びながら,世界に向かって奏でられる汽笛を聞くと,誰しも「この1年,がんばるぞ!」という新しい年への期待と希望が湧いてくる。「みなとヨコハマ」の代表的な音風景だ。
氷川丸船内や山下公園とその周辺では,この「除夜の汽笛」を聞くための,いろいろなイベントが開催され,毎年,大変なにぎわいを見せている。
昔ながらの人情と活気あふれる門前町
所在地
神奈川県川崎市
よく聞ける時期
毎年1月,2月
よく聞けるところ
川崎大師の参道(表参道,仲見世通り)
解説
川崎大師は例年,正月三ヶ日には300万人を超える参拝客で賑わう。
京急川崎大師駅を出ると,左手に見えてくるのが厄除門。その門をくぐると,両側には久寿餅屋,だるま屋など,さまざまな店が軒を連ねている。この昔ながらの人情とたたずまいが残る,活気あふれる表参道,仲見世通りを歩いて行くと,川崎大師にたどりつく。
参詣の途中,さまざまなざわめきのなか,お土産屋さんの呼び込みの声や,「とんとこ,とんとこ」と調子を取りながら,飴を切っている音など,大師を詣でたことのある人なら誰でも思い出される音風景である。
工業都市として発展してきた川崎市の中で,人情味あふれる下町の心和む情景のひとつとなっている。
清らかな水源と豊かな自然の野鳥の天国
所在地
神奈川県相模原市
よく聞ける時期
1年中いつでも
よく聞けるところ
園内の沢,林の中の散策路(野鳥観察小屋あり)
解説
道保川は相模原市の南西部を流れる相模川の支流の一つ。このあたりの地形を特徴づける段丘崖の下から湧き出る地下水が,道保川の源だ。段丘崖とは段丘が重なりあったゆるやかな崖で,それだけ清らかな水と豊かな自然が残されている。
その水源地に整備された道保川公園は,清流と緑の触れ合いの場として人々に親しまれている。
都市化の進む相模原に残された自然を体感できる貴重な公園で,水辺の動植物はもちろん,野鳥たちの聖域ともなっている。クヌギ,コナラなどの林の中を散策すれば,沢のせせらぎとメジロやシジュウカラなどの野鳥のさえずりが心地いい。
中部

●富士山麓・西湖畔の野鳥の森
神秘的な青木ヶ原樹海でバードウォッチング
所在地
山梨県富士河口湖町
よく聞ける時期
春,4〜5月ごろ
よく聞けるところ
青木ヶ原樹海北部,西湖畔村営野鳥の森公園一帯
解説
富士山麓,西湖畔の野鳥の森は,富士山の北側,足和田村の青木ヶ原樹海の北部にあり,西湖や東海自然歩道のビューポイントである紅葉台などとともに自然景観に恵まれたところ。富士山の勇姿を間近に眺められ,特に鳥が多い。
平成4年(1992)に,この青木ヶ原樹海の一角に村営野鳥の森公園がオープンした。樹海の動植物を安心して観察できる場所として注目を集めている。
公園一帯は日本の自然百選や全国森林浴百選にも選定され,遊歩道やハイキングコースが整備されている。森林浴を楽しみながら,ヤマガラやコガラの声が,また青木ヶ原樹海の散策路ではホトトギス、ジュウイチ、ミソサザイなどの多種類の野鳥のさえずりを聞くことができる。
今も昔も詣でる人々の耳を楽しませてくれる
所在地
長野県長野市
よく聞ける時期
1年中休むことなく,毎日朝10時から夕方4時まで,毎正時に時の鐘が鳴る。
よく聞けるところ
昔は遠くまで聞こえたというが,今は善光寺周辺の約400メートル範囲となり,とくに市民の憩いの場所である城山公園でよく聞こえる。
解説
長野市は善光寺の門前町として栄えてきた。善光寺は大昔から極楽往生をかなえてくれる仏さまとして語り継がれ,「一生に一度は善光寺参りを」と庶民からも厚い信仰を受ける古刹だ。
梵鐘は高さ180センチで,多数の印刻名がある。それによると寛永九年(1632)に鋳造した鐘が破損したため,寄付金を集めて寛文七年(1668)に完成された。
「ごぉ〜ん,ごぉ〜ん,ごぉ〜ん」と,おごそかに時を告げる鐘の音,その昔は「善光寺の鐘が聞こえるところでは杏が実る」ともいわれ,約20キロ離れた杏の名所,更埴市森まで聞こえたという。 鐘楼は切石積みの高い基盤の上に立つ入母屋づくりで、柱は6本。「南無阿弥陀仏」にちなんだという。
小鳥の鳴き声オーケストラと森林浴と大展望を
所在地
長野県岡谷市,塩尻市
よく聞ける時期
四季を通じて楽しめるが,とくに初夏がいい。
よく聞けるところ
塩嶺御野立公園周辺
解説
塩嶺は八ヶ岳中信高原国定公園の一角にあり,長野県の”小鳥の森”にも指定されている。この峠一帯は,広葉樹と針葉樹が混在していて,四季を通じて,繁殖鳥,留鳥,漂鳥,南鳥,冬鳥など多種多様の野鳥が確認されている。とくに初夏にはカッコウ,アカハラ,キビタキなどの声がにぎやかだ。昭和29年(1954)から始まった「塩嶺小鳥バス」は,野鳥研究の専門定期バスで,5月,6月の日曜の早朝に運行されている。愛鳥精神で自然を楽しみ,大切にしようというのが目的だ。
すがすがしい朝の光の中、窓の近くや遠い谷間で、小鳥たちのさえずりが聞こえる。日本野鳥の会のガイドにレクチャーを受けながら、森の中を歩くのも楽しい。
短い夏を謳歌するカエルたちの求愛合唱と湿原の可憐な花々
所在地
長野県下諏訪町,諏訪市
よく聞ける時期
6〜7月
よく聞けるところ
八島湿原周辺に散策道あり。隣接のあざみ館に資料が展示されている。
解説
あざみの歌の舞台になった八島湿原は標高1600メートルを超える高原にある。6月のレンゲツツジから9月のマツムシソウへと短い夏は一気に最盛期を迎える。短期間に咲きそろう400種を超える高山植物や100種以上の蝶類に混じって貴重なカエルの生息地でもある。
初夏にはシュレーゲルアオガエルが「カラララララ」という恋の歌を歌い始める。普通の雨蛙よりずっと高く,透きとおった鳴き声がよく響く。ほかにも,「カッカッカッ」と鳴くヤマアマガエルなどの声も聞こえてくる。
湿原全体が天然記念物に指定されているが、湿原をグルリと一周できる遊歩道(約3.5キロ)が整備されているので、雑踏を離れ自然との対話を楽しみたい。
オオヒシクイの太い鳴き声とV字型の大編成
所在地
新潟県新潟市
よく聞ける時期
10月から3月,冬の渡り鳥の季節
よく聞けるところ
福島潟周辺どこでも
解説
福島潟は,新潟県内最大の潟湖で,阿賀野川の東,豊栄市の南東に広がる。
植物は,北限のオニバスをはじめ350種の水生・湿生植物が自生し,鳥類は,国内最多の飛来数を誇る天然記念物オオヒシクイなど220種が観測される自然の宝庫である。また,渡り鳥の調査拠点にもなっている。
四季折々,この潟では野鳥のさえずりを楽しめるが,とくに周囲の風景がモノトーンの冬の季節,体に響くようなオオヒシクイ(豊栄市の鳥)の大きな鳴き声とV字型の雄大な飛行は,聞いた人,見た人にしかわからない一聞,一見の価値がたしかにある。
オオヒシクイの故郷の一つ、福島潟の自然環境をいつまでも守りたい。
音頭取りのリズムに合わせて一斉に鳴き始める大合唱
所在地
新潟県糸魚川市
よく聞ける時期
7月中旬から8月上旬。早朝から日没後までの間
よく聞けるところ
白山神社の社叢。とくにアカガシ樹林。
解説
能生白山神社の裏山の社叢は尾山といわれ,日本海岸の暖帯林の北部限界地で,地域の人の篤い信仰に守られてきた。そのため自然の植生が残っており,能生ヒメハルゼミ発生地として社叢とは別に天然記念物に指定されている。
ヒメハルゼミはセミ類の中ではもっとも小さい仲間に属し,体長は約3センチ。体が小さいわりには鳴き声が大きい。日本海側では兵庫県と,ここ能生町だけに発生し,能生町が北限地となっている。どちらも神社の社叢である。
7月中旬からは山全体で,ヒメハルゼミの大合唱(蝉しぐれ)が聞ける。「音頭取り」と呼ばれる雄に合わせていっせいに鳴いたり鳴き止んだりする様は、夏の音風景の一つ。
日本一の巨大な滝が滝壺にとどろかす爆音
所在地
富山県立山町
よく聞ける時期
4月下旬から11月末日
よく聞けるところ
滝見台園地
解説
日本を代表する北アルプス立山連峰の水を一気に集め,全長350メートルを流れ落ちるのが,称名滝である。その昔,立山開山の主人公佐伯有頼が嶮しい坂にかかったときに,称名念仏の声に励まされて坂を越えたが,これが滝の音だったという伝説に由来する。
滝には毎秒2トンの水が流れ,豊水時には100トンを越えることがある。また雪解け時には称名滝の向かって右手に,滝壺を同じくしたハンノキ滝が流れ落ち,2本の滝が巨大なV字型を描く。滝壺は直径60メートル,水深6メートルで,滝壺近くでの爆音は大迫力だ。
新緑や紅葉など四季の変化はもとより、1日の陽光の移り変わりに応じて、称名滝その姿を刻々と変えている。
坂の町に流れる用水音と、もの悲しい祭の音色に酔う
所在地
富山県富山市
よく聞ける時期
4月下旬から11月末日
よく聞けるところ
水音は通年,風の盆は9月1日から9月3日,8月20日〜30日は前夜祭。
解説
越中八尾は,富山平野が飛騨山地にかかるあたり,越中と飛騨を結ぶ要として三五〇年の歴史の重みを感じさせる町並みをも持つ。
坂の町筋には,家々の軒下に溝があり,川水が気持ちいい音をたてて流れている。これが「エンナカ」で,冬に屋根雪を流し運ぶための知恵である。
この八尾の町が,年に3日間,踊りに酔う。風を治め(二百十日)五穀豊穣を祈る「おわら風の盆」である。
三味線,胡弓,太鼓の哀調をおびた調べにのって,坂の道にぼんぼりの灯がともるころ,坂道の上手か下手から踊りの輪が生まれてくる。女性は深編笠に浴衣でしなやかに、男性は黒法被、黒股引できりっと躍動的な踊り。9月1日から3日まで、八尾の町はおわら節に熱く燃え上がる。
石畳の美しい町並みを歩くと木彫りの音が
所在地
富山県南砺市
よく聞ける時期
年間と通して,時期,時間を問わない。
よく聞けるところ
工房は市街地全体に点在しているが,とくに,古い町並みや石畳と木彫りの音とが調和した八日町通りは,独特の風情がある。
解説
富山県の南西部,散居村で名高い砺波平野の南端にのどかに連なる八乙女山の山麓に,ひな壇のように静かにたたずむのが井波町。六〇〇余年の歴史と北陸随一の威容を誇る瑞泉寺の門前町として栄え,「信仰と木彫りの里」として知られる。
古い町並がつづく石畳を歩いていると,どこからともなく木の香りとともにトントン,コツコツと心地よい木彫りの音が聞こえてくる。
彫刻師の数は300人を数え,二〇〇年の伝統の技法を今に伝えている。町の通りに面している工房の数は150軒ほど,両側で一心にノミを振るう職人たちの木を刻む姿や槌音にふれることができる。訪れる人々の多くが足を止める風景が、また独特の風情を醸し出している。
朝や夕暮れ時、せつないヒグラシの声が市街地に響く
所在地
石川県金沢市
よく聞ける時期
7月上旬から8月までの朝と夕方
よく聞けるところ
広坂から嫁坂までのタブ・スダジイの林周辺。とくに広坂は,地元の人々に親しまれている。
解説
ヒグラシは,沖縄を除く日本全土に分布し,東京以北では平地に,関東以西では山地のスギ林などの湿った林に生息している。
金沢では,山地,平地ともに生息しているが,ここ「本多の森」は,市街の中心であるにもかかわらず,河岸段丘なので,古くから比較的自然が保たれ,タブ・スダジイなどの木々が茂る。
ここの森では,毎年7月上旬から8月まで,ヒグラシの鳴き声を存分に聴くことができる。
一日のうちでは,おもに朝夕に鳴くため,通勤・通学の時間帯と重なって,道ゆく市民の人々の耳に親しまれている。
熱い夏の朝夕,市街地に一服の清涼感をかもし出している。
文化と自然に満ちた静かな古都に鐘の音が時をうつ
所在地
石川県金沢市
よく聞ける時期
寺独自で鐘を撞いている寺院では,毎朝5時。地元住民が撞いている寺院では,毎週土曜日の夕方6時
よく聞けるところ
南大通り,寺町通り。とくに裏通りでは,交通騒音も少なく,よく聞こえる。
解説
寺町寺院群は,加賀百万石の城下町金沢に流れる犀川の中流左岸に接する位置にある。その名のとおり70余りの寺院がつづき,古いたたずまいを残す,静かな町並みである。
このあたりでは,明け方と夕方に,どこからともなく聞こえてくる鐘が日々の時を告げている。朝方は家の中で,夕方は街の中で,鐘の音に耳をかたむけていると,古都「金沢」の落ち着きのある風情がそこはかとなく漂ってくる。
しかし,一時は撞き手が少なくなって寺町寺院群から鐘の音が消えかかっていたという。そんななか,撞き手の少ない寺に代わって地元住民が鐘を撞く活動も増えている。
水音が時を知らせる自然の不思議
所在地
福井県越前市
よく聞ける時期
1年中,いつでも
よく聞けるところ
滝の周辺
解説
武生市味真野地区の蓑脇町に,標高611メートルの大平山がある。この山には頂上が二つあり,北向きの谷間は,木呂谷と呼ばれている。その中腹に,洞孔の奥の亀裂から,ほぼ60分間隔で,最高200・の水が吹き出している間歇冷泉が存在する。
水量は季節や降雨などに関係なくほぼ一定し,最高噴出水位から50分ほど経つと,最低水位となり,止まることはない。
最高水位に近くなると,下流の滝の音が大きくなり,昔,山で仕事をしている人たちが,この音を時計がわりにしたことから,「蓑脇の時水」と呼ばれた。間歇の原理は定かではないが、地元の人たちは、この不思議な自然現象を大切に守り伝えている。
生きた自然をそのままに伝える重厚な海鳴り
所在地
静岡県遠州灘
よく聞ける時期
時期は一定していず,気象に左右される。とくに天候の変わり目によく聞こえる。
よく聞けるところ
浜岡町の浜岡砂丘,大東町の千浜砂丘,竜洋町の竜洋海洋公園,浜松市の中田島砂丘,舞阪町の浜表東駐車場,浜名湖弁天島など。
解説
遠州灘とは,静岡県の太平洋につきでた御前崎から愛知県渥美半島の伊良湖岬に連なってひろがる海面のことである。
その一帯の波は,とても不思議な海鳴りを発する。とくに天候の変わり目のときなどには,普段の磯の潮騒とはまったく異なった一段と高い波音をたて,その音は古来から「波小僧」と愛称され,多くの人々に親しまれてきた。
「波小僧」は,発生源の方向位置を知ることにより,これからの天候を予知できるともいわれている。波音が東南に聞こえるときは「雨または風」,南西から聞こえるときは「晴れ」ということらしい。今でも、この海鳴りによる波音は、身近な天気予報として、遠州灘一帯に暮らす人々の生活に深く溶け込んでいる。
川沿いを行く蒸気の排気音と汽笛の響き
所在地
静岡県川根本町
よく聞ける時期
SLが発車するとき。とくに春から初夏にかけて,野鳥のさえずりが多い季節がいい。
よく聞けるところ
智者の丘公園
解説
南アルプス奥大井の麓,本川根町には,日本でも数少ないSLが走っている。金谷から千頭まで,1日に何回か走るSLの山々にこだまする排気管と汽笛の音は,人々の心をなごませるように心地よく,雄大で,この町の生活の一部として時計替わりにもなっている。
さらに,奥大井にはオオルリやアカショウビンなど森のノド自慢たちが多く,野鳥たちのさえずりとともに聞こえてくる汽笛の音は格別だ。
本川根町は,このようなSLの汽笛や野鳥のさえずりの音のほか,川のせせらぎ,吊り橋のきしみ,神楽など,音との関りが深い町である。音と戯れることをテーマにした「音戯の郷」(平成10年4月オープン予定)を建設中である。
広い園内を自由にさえずり飛び回る野鳥たち
所在地
愛知県名古屋市
よく聞ける時期
1年中,いつでも。春や秋の渡りの季節はとくに種類も多く賑やか。1日中聞こえるが,季節によっては,午前中の早い時間帯が声の種類も多い。
よく聞けるところ
植物園の全域。とくに東海の森,万葉の散歩道を含めた和風庭園区域。
解説
東山植物園は,広さ27ヘクタールの丘陵地にあり,その6割以上を自然林が占めている。
園内には,東海地方の樹木を集めた「東海の森」や,万葉集の植物を植栽して歌碑や歌看板などを設置した「万葉の散歩道」など,趣向を凝らした見本園が,広い園内を飽きさせない。
とくに也有園,奥池,合掌造りの家,日本庭園等を配置している和風庭園地区は,池や渓流,湿地など水辺環境もよく,植物はもちろん野鳥や水生小動物など,さまざまな生物が生息している。なかでも野鳥は60種以上が確認され,よい野鳥観察の場となっている。
都心にありながら、都会の喧噪から離れて、静かな自然風景とともに聞く野鳥たちの声はまた格別だ。
太平洋の黒潮洗い、波に遊び波と語る恋路ヶ浜
所在地
愛知県田原市
よく聞ける時期
1年中聞くことができるが,風の影響で春から夏は雄大,秋から冬はやさしい潮騒となる。
よく聞けるところ
恋路ヶ浜
解説
渥美半島の先端,伊良湖岬は,三河湾国定公園内にある。「恋路ヶ浜」のほかにも,「日出の石門」「伊良湖灯台」など,景勝地が多い。「恋路ヶ浜」という名前は,許されぬ恋の道行きに力尽きた男女がこの浜で貝になったという伝説からきている。島崎藤村の『椰子の実』の詩(名も知らぬ遠き島より流れ寄る椰子の実一つ...)の舞台で,沖合には三島由起夫の小説『潮騒』で描かれた神島が浮かぶ。
このように,歴史とロマンあふれる詩情豊かな恋路ヶ浜で聞く潮騒は,ときには荒々しく雄大に,ときにはやさしく叙情的に打ち寄せ,常春の岬のBGMとして、訪れる人々の心に響きわたっている。
永遠の海に向かい合う海女たちの口笛
所在地
三重県鳥羽市,志摩市
よく聞ける時期
鳥羽市...7月11日に菅島で行われる「しろんご祭り」の時志摩市志摩町...毎年4月1日から9月14日まで
よく聞けるところ
鳥羽市菅島の,港の東方「しろんごの浜」や,パールロード沿線の海岸の磯場。
志摩市志摩町では,太平洋に面した片田地区の麦崎が特によい。
解説
緑の岬や島が伊勢湾口から熊野灘へと続く紀伊半島。その東の突端,伊勢志摩は,リアス式海岸が連なり,風光明媚な自然景観を形成している。海域は,豊かな漁場となり,魚介類の絶好の生息地だ。
そこに暮らす人々は,古来から漁業を中心に海と深い関わりをもって生活を営んできた。アワビやサザエなどを岩礁から潜り取る海女漁もそのひとつで,体力や経験が必要な昔ながらの特別な漁法である。
海女は,深い磯場の長い潜水から海面に浮上すると,その息継ぎのために,口笛に似た,物悲しげな吐息を発する。これは,一種の呼吸調整法だが、潮騒の中に響く音色は哀調を帯び、「海女の磯笛」と呼ばれて、伊勢志摩の代表的風物になっている。
茶室わきで地中からかすかに聞こえる風雅な音色
所在地
岐阜県美濃市
よく聞ける時期
1年を通していつでも
よく聞けるところ
水琴窟設置近く
解説
卯建とは,昔からよく使われている言葉,「うだつがあがらない」の語源となったものである。江戸時代に防火の目的でつくられ,その後は建物の装飾としての意味合いがこめられてきた。
古い町並みに,江戸時代中期に建てられた商家「旧今井家」は,当時庄屋を勤める一方,和紙問屋として栄えた。その奥座敷から眺める庭園の一角にあるのが,水琴窟だ。
水琴窟は,庭師により考案されたものである。茶室の入り口や手洗いの入口横下に,底に小さな穴をあけたカメを逆さにして埋め,水がカメのなかに落ちると,中で反響して琴に似た静かな澄んだ音を響かせるので、水琴窟といわれる。 侘び寂の極地ともいうべき、日本庭園の最高傑作だ。
子供たちの歓声と跳ねあがる水しぶきが一体に
所在地
岐阜県八幡町
よく聞ける時期
夏,7月から8月にかけて
よく聞けるところ
市街地の中央を流れる吉田川の新橋,宮ヶ瀬付近。
解説
夜を徹して踊る郡上踊りで名高い八幡町は,中央に清流吉田川が流れる山紫水明の町である。付近の子どもたちは,夏の間,この吉田川で泳いだり,12メートルもの高さのある新橋から飛び降りたりなど,思う存分,水とたわむれている。
川遊びをする子どもたちの歓声,橋から高飛び込みで飛び降りる前の静寂,気合いを入れる掛け声,飛び降りたときの水音など,すべてが八幡町の夏の風物詩である。
八幡町は清流吉田川,小駄良川ぞいの湧水「宗祗水」,町中を流れる鯉の泳ぐ用水など,水と人の共生の町である。その町の子どもたちが、自然に水と親しんでいる姿は、実に心なごむ故郷風景である。それらの水音と歓声はまことに貴重な音風景だ。
幻想的な音風景が暮れなずむ川面に映る。
所在地
岐阜県岐阜市,関市
よく聞ける時期
鵜飼の開催時期である,毎年5月11日から10月15日までの午後7時30分ごろから8時30分ごろ。
よく聞けるところ
鵜飼観覧船上や河原
解説
風かおる5月11日の夕暮れ時,長良川河畔の岐阜市や関市では,古式ゆかしい鵜飼がシーズンの幕を開ける。
長良川の夏の風物詩,鵜飼は,千数百年の時を越えて古来の伝統漁法が現在に伝わったものである。毎夜,かがり火の下で素朴に,そして華やかに,繰り広げられる古代絵巻はたいへん情緒があり,見る人に感動と興奮を与えている。
暮れなずむ川面に,浮かぶ鵜船。鮎を追うひたむきな鵜の姿,「ホウホウ」とかけ声をかけながら,みごとな手縄さばきで鵜をあやつる鵜匠の姿。船頭が舟端を「ドンドン」とたたき,かがり火が暗い川面に投げかける投影。 辺り一帯はどこか夢みるような幻想的な趣と音に満ちてくる。
近畿

●三井の晩鐘
湖面や森の緑にしみいるようなあたたかな音色
所在地
滋賀県大津市
よく聞ける時期
毎日,夕方5時ごろに時を告げている。また,大晦日には除夜の鐘の行事が行われる。
よく聞けるところ
園城寺(三井寺)境内およびその周辺
解説
近江八景のひとつとして有名な「三井の晩鐘」は,天台寺門宗総本山の園城寺(三井寺)の金堂前の鐘楼につるされている。この鐘は,慶長七年(1602)に,伝説で知られている「弁慶の引摺鐘」を摸して造られたものである。
琵琶湖を眼下に見下ろす長等山の静かで広大な境内にあるこの鐘は,毎夕,暮れ六つの鐘として周辺に時を告げ,大晦日には,琵琶湖の竜神伝説に由来する除夜の鐘の行事も行われる。
その音色のすばらしさは古くから知られ,形の平等院,銘の神護寺とともに,音の三井寺として日本三名鐘のひとつに数えられており,長い歴史が育んだ物語や伝説とともに,地域の人々に親しまれている。
虫の音色にあいまって時をうつ、白亜の名城の時の鐘
所在地
滋賀県彦根市
よく聞ける時期
時報鐘は1年中聞くことができるが,ヒグラシの蝉しぐれは7月下旬から8月下旬,スズムシ,マツムシなどは9月〜10月に限られる。
よく聞けるところ
鐘の音は彦根城周辺で。スズムシ,マツムシなどは城内玄宮園,ヒグラシは彦根城内一帯で聞ける。
解説
琵琶湖畔の小高い丘の上に端正にそびえたつ白亜の彦根城。その時報鐘は,国宝に指定されている天守のすぐ近く,城下を一望できるところにある。元は鐘の丸にあったが,城下一帯によく聞こえるように,現在の場所に移された。
12代藩主,井伊直亮の時代に,より音色の美しい鐘にするために,小判を入れて造られたと伝えられており,現在でも時代の移り変わりを音色で知らせる”時のオルゴール”として,城の係員によって朝6時から夕方6時までの3時間ごとにつかれている。
また,彦根城を背景に聞こえるヒグラシの蝉しぐれや,スズムシなどの虫の音は,旧大名庭園「玄宮園」の風情を醸し出している。毎年9月には,虫の音を聞きながら邦楽,野点を楽しむ「玄宮園で虫の音を聞く会」が催される。
風音と共に移りくる、空に向かった竹の話し声
所在地
京都府京都市
よく聞ける時期
1年中聞くことができる。5〜6月は,青竹の緑が目に鮮やかで一層よい。
よく聞けるところ
嵯峨野…天竜寺北側,野宮神社から常寂光寺への小路
洛西…西芳寺・地蔵院周辺や大原野神社・勝持寺周辺,京都市洛西竹林公園とその周辺などがよい。
解説
嵯峨野や洛西に広がる竹林は,風にそよいで揺らぎ,さざ波や大波を生み,生き物のように波打ってさまざまな音色を奏でている。
嵯峨野.嵐山は観光地としてかなり有名だが,ゆっくり歩きながら巡ってみれば,竹林をぬける散策路や,それに溶け込んだ社寺など,古都の風情を満喫できる。
また,京都市街地から桂川を隔てた洛西は,古くから竹やタケノコの産地として知られている。竹の緑がこの辺りの社寺にさらに趣きを添えている。
宅地開発による竹林の伐採が行われたため,竹林を保存する目的で「京都市洛西竹林公園」が開園された。回遊式の園内にはさまざまな竹が植えられて,竹林のささやきが楽しめる。
渓流が生み出す、野鳥や虫の声の壮大な合奏曲
所在地
京都府園部町
よく聞ける時期
1年中,いつでも
よく聞けるところ
鳴瀑,双龍淵,弾琴泉,千幻瀑などの名称がついているところ。
解説
園部町は,京都駅から嵯峨野に揺られたところ。保津川の流れを見ながら,山合いを西に向かって進んで行く車窓は趣がある。
園部駅からさらに南西へ向かったところにある緑豊かな4キロにわたる渓谷は「るり渓」と呼ばれ,その名は宝石の瑠璃にちなんでつけられたという。
奇石,巨岩が鳴瀑,双龍淵などのビュースポットを形成し,渓流の音は機織り,汽車,琴,鼓,風のような音に聞こえてくる。また,野鳥のさえずりや虫の声と重なり合って,さらにオリジナルな音風景が作り出されている。
約4キロにわたって演出される渓流と野鳥,虫の和音は,壮大な名楽器の音色とも受けとれる。
砂の鳴き声を踏みしめ白砂青松の自然海岸を行く
所在地
京都府網野町
よく聞ける時期
砂が湿っていなければ,1年を通してよく聞ける。とくに春先がよい。
よく聞けるところ
とくによい場所は太鼓浜周辺とその西側
解説
京都府の日本海側,丹後半島網野町にある琴引浜は,延長1800メートルの日本で最大級の鳴き砂の浜である。この浜は,コンクリート護岸などの人工的構造物が全くなく,自然海岸として保たれている。また,浜の後背地には,貴重な海浜植物が植生するとともに,松林が美しい景観を形成していることから,「全国白砂青松百選」にも選ばれている名所である。
乾いた砂の上を足を擦るように歩いたり,手で強く掃いたりすると,「クックッ,キュッキュッ」と鳴くが,浜の中央部には,拳で砂をたたくと「ドンドン」と鳴く,太鼓浜と呼ばれるところがある。
きらめくビルの明かりを背に虫の音に酔う
所在地
大阪府大阪市
よく聞ける時期
秋の日没前後から深夜にかけて
よく聞けるところ
淀川河川公園大淀野草地区の全域。草むらのなかの散策路が最も近くに聞こえる。
また,淀川右岸の菅原城北大橋付近や淀川左岸の城北公園周辺でも聞かれる。
解説
大阪の中心を東西に流れている淀川。両岸に煌々と夜空を照らす梅田や十三の明かりのなか,街灯ひとつない河川敷は,都市とは隔絶した空間のようである。
秋の河川敷で鳴く虫は,10種類以上を数え,そのなかでもマツムシは草丈の高い植物の中に多く,独特の金属音に似た鳴き声で幻想的な雰囲気を醸し出している。風に吹かれて暮れなずむ河川敷を歩くのが心地よいが,菅原城北大橋の上からでも聞こえるという。また大阪には「てっちりり」と聞きなす人もいるらしい。
自然が排除されがちな大都会だが,現代でも昔からの歌に詠まれた虫の声を聞くことができるのは,野草をそのままに残す自然環境を保持しているからといえよう。
調子のいい節にのって、踊る今宵もまた楽し
所在地
大阪府八尾市
よく聞ける時期
毎年8月23,24日の両日。冬以外正調河内音頭保存会が境内の稽古場で練習している。
よく聞けるところ
常光寺境内。この時期,市内のどこでも地蔵盆が開かれ,盆踊りも開かれる。
解説
河内音頭は,口説き形式の盆踊り唄で,日本を代表する音頭である。多くの流派がある中で,常光寺で歌いつがれている「流し節・正調河内音頭」は,その原型とされている。
約600年前,時の将軍,足利義満の命でこの寺の再建にあたった人たちが,木材を運びながら歌った木曳歌というのがその始まりという。ここ,八尾が河内音頭の発祥の地といわれるゆえんである。
毎年8月23,24日には,常光寺境内をはじめ,八尾市内のいたるところで地蔵盆踊りが開催される。常光寺のものが一番盛大で,提灯で飾られた境内には河内音頭がひびき,人々は思い思いに踊る。冬場以外は,保存会の人々が境内で練習もしているという。
漁船のエンジン音とカモメの鳴き声が春の訪れを
所在地
兵庫県神戸市
よく聞ける時期
2月下旬から4月下旬
よく聞けるところ
垂水漁港一帯
解説
瀬戸内海の春は,イカナゴ漁とともに訪れる。神戸市垂水沖合では,イカナゴ漁が2月下旬から4月下旬にかけて最盛期となり,その水揚げ作業で忙しくなる。
暖かい春の日差しを受けたその風景は,この地の風物詩となっている。地域の人々は,待ち望んでいた春の気配の訪れに,気分が高揚する。
日の出とともに出港した数十隻の漁船のエンジン音,船上の威勢のいい掛け声,網の中で無数のイカナゴが元気にはねる音,さらに上空をのびやかに乱舞するカモメの大群の鳴き声があいまって,風情ある春の音風景が作りだされる。
太鼓のリズムに人々の歓声がこだまする
所在地
兵庫県姫路市
よく聞ける時期
10月14,15日
よく聞けるところ
14日…宵宮の午後,松原八幡神社。
15日…本宮の早朝から夕刻にかけて松原八幡神社と御旅山で。
解説
播州各地の秋祭りのなかで,10月14,15日に松原八幡神社で行われる大祭は,その勇壮さと華麗さから「灘のけんか祭り」と呼ばれ,全国的に知られている。
14日の午後と15日の午前中は松原八幡神社で,午後から御旅山へ場所を移し,神輿のぶつけ合いと屋台の練り合わせが盛大に繰り広げられる。
御旅山の斜面は段々畑になっていて,15日にはこの畑が桟敷席となり,十数万人の見物客で埋め尽くされる。この天然の大舞台に1台のだんじりが神輿と屋台を先導して,独特の小気味よいテンポの太鼓と掛け声で登場する。
さわやかな秋空の下で,太鼓の音と人々の歓声が響きあい,荒々しい神輿のぶつけ合いと絢爛豪華な屋台の練り合わせは最高潮をむかえる。
鹿の呼び声をやさしく包む古寺の鐘のひびき
所在地
奈良県奈良市
よく聞ける時期
鹿の鳴き声は自然に聞けるが,東大寺の鐘は毎晩8時,興福寺の鐘は1日3回朝6時,正午,夕方6時に鳴る。
よく聞けるところ
鹿の鳴き声は春日野周辺で,鐘の音は,双方の寺の周辺にて。
解説
奈良市のほぼ中央に位置する春日野あたりは,初夏の鮮やかな緑はもちろん,四季それぞれに多様な姿を見せるとともに,約1200頭もの野生の鹿が,訪れる人々をつぶらな瞳で迎えている。
早朝,この辺りを散策していると,静けさのなかに時折鹿の鋭い鳴き声が響き,さわやかな空気に溶けあったその風景が,心をなごませてくれる。
また,奈良の歴史の象徴ともいえる社寺も数多く,奈良公園の玄関にあたる五重塔のそびえる興福寺,大仏殿を構える東大寺はその代表である。そして寺々の鐘は,創建の頃より時の流れをこえた重みのある鐘の音を響かせ,古都奈良の町と人々に安らぎを与え続けている。
一気に落ちゆく水柱の轟音と、ほとばしる飛沫
所在地
和歌山県那智勝浦町
よく聞ける時期
1年中聞ける。多雨の時期がとくによい。
よく聞けるところ
滝へ降りる坂の中段から下段くらいのところ。
解説
那智の滝は,落差133メートル,日本三名瀑に挙げられる滝として全国的に知られている。
古くから熊野詣での目的地のひとつでもあり,原生林の中を飛沫をあげながら落下する様子は,訪れるものを荘厳な気持ちにさせてくれる。滝のしぶきにふれると延命長寿の霊験があると伝えられ,参拝客や観光客が途絶えることがない。
那智大社への参道からは,遠く滝音が聞こえるだけで姿は見えず,さらに本殿へ入れば,地形の関係で音さえも聞こえなくなるが,そこから奥へ進むと大滝が豪音とともに現われる。その変化する滝音が,古来,人々にこの地の神秘性を強く印象づけてきている。
中国・四国

●水鳥公園の渡り鳥
中海に響き渡る千羽ものコハクチョウの声
所在地
鳥取県米子市
よく聞ける時期
10月中旬から翌年の3月中旬
よく聞けるところ
公園内のつばさ池と周辺
解説
国内で第5位の広さを持つ中海は,古くから水鳥を中心とした野生の鳥たちの渡来地としてよく知られている。とくに,米子水鳥公園周辺は,これまでに223種もの鳥類が記録されている。
1年を通してたくさんの鳥が生息するが,なかでもコハクチョウの集団越冬地の国内の南限としても貴重な地域である。毎年千羽をこえるコハクチョウがやってきて,水面に響き渡る「コォーコォー,コォーコォー」という鳴き声が賑やかだ。
鳥たちが羽を休めるつばさ池の観察ホールでは,双眼鏡や望遠鏡で身近に観察できる。ほかにもマガンやヒシクイなど珍しい鳥もいて,水鳥の楽園として親しまれている。
澄んだ鳴き声が川のせせらぎに調和する。
所在地
鳥取県三朝町
よく聞ける時期
初夏から初秋にかけて(6月から9月)
よく聞けるところ
三朝温泉恋谷橋,同やなせ公園緑地地帯
解説
清流の岩間に好んで生息するかじか蛙の鳴き声は,今や三朝温泉の夏の風物詩となっている。
三朝温泉は,鳥取県のほぼ中央にあり,その昔,源義朝の家臣大久保左馬之祐が,夢のお告げで発見したとの言い伝えがある。その湯はラジウムの含有量が多いことで有名だ。
町の中心には,両岸に温泉旅館の立ち並ぶ三徳川が流れている。
初夏になるとかじか蛙の「カラカラカラ」の澄んだ鳴き声が聞け,川のせせらぎの音と相まって,なんとも涼やかだ。雄だけが出すというこの美声を聞けるのは初秋まで。
浴衣がけがふさわしい温泉街の散歩を楽しんだあとは,三朝温泉そばの河原にある露天風呂に入ってみたい。橋から見通せるので,夕方からが落着ける。
長い時の流れを経て、今も技が奏でる。
所在地
鳥取県鳥取市
よく聞ける時期
1年中,朝から晩まで
よく聞けるところ
青谷町…山根,河原集落内
佐治村…村全域で聞こえるが,とくに津無地区,つく谷地区が盛ん
解説
州和紙は,1千年余りの歴史があるといわれる和紙産業であるが,明治時代には1300業者あったものが,いまでは26業者余りに減少している。
ここには,画仙紙を中心とした手すき和紙の技術が伝承され,その生産工程のなかで,清らかな水に溶かしたミツマタなどの繊維を汲み取り,「ちゃっぽん,ちゃっぽん」と何回も何回も簀桁を揺り動かしながら,紙をすき上げていく。
この温もりのある紙すきの音は,集落内を歩いていると,点在する手すき場から聞こえてくる。
山間の家並の中に静かにもれる,磨き抜かれた技が奏でる音は,ふるさとの伝統的な風物詩として親しまれている。
気の遠くなるような500万年もの大自然の営み
所在地
島根県大田市
よく聞ける時期
1年中聞くことができる
よく聞けるところ
波打ち際から4〜5メートルくらいのところ
解説
琴ヶ浜海岸は,100メートル幅の白砂の浜が2キロにわたって続く美しい海岸で,夏は海水浴場や盆踊りで,人々に親しまれている。
海岸の砂の上を歩いたり,手で砂をこすってみると,心地よい感触とともにキュッキュッと美しい音を奏でる。これが,いわゆる鳴き砂,歌い砂などと呼ばれるものである。
日本中で鳴き砂は十数ヵ所あるといわれているが,ここ琴ヶ浜はよく鳴る砂浜として知られている。鳴き砂は500万年もの長い年月を経てできたもので,鳴き砂に混じって美しい微小貝も見え隠れする。
浜の中央には,琴ヶ浜の名前に由来する琴姫を供養する墓碑が建てられている。
鍾乳洞から湧き出る水が水車を回わす
所在地
岡山県真庭市
よく聞ける時期
年間を通して聞けるが,とくに春から夏がよい。
よく聞けるところ
水車のそば
解説
新見市の東側にある北房町は奇岩,奇勝の宝庫だ。気の遠くなるほど長い年月を水がしたたり落ちてできた神秘的な鍾乳洞が点在する。
天然記念物に指定されている「諏訪洞」のなかでは,激しく湧き出る水が小川となり音を立てて流れている。その流れは備中川に合流し,サラサラと流れるせせらぎはゲンジボタルの幼虫カワニナを育てる。ギシギシと鳴る水車とともにのどかで懐かしい農村の音風景をかもし出している。
北房町はホタルの里で,洞の入口の林にはヒメボタルも生息する。近くには「ほたる公園」もあり,動植物などの自然に恵まれている。
旧宿場をたゆまず流れる小川のせせらぎメロディー
所在地
岡山県新庄村
よく聞ける時期
1年中聞けるが,桜の満開と紅葉の時期には風情がある。
よく聞けるところ
がいせん桜通り
解説
出雲街道は姫路と松江を結ぶ街道で,参勤交代で栄えた。
旧宿場町である新庄宿の桜並木の両側では,さらさらと流れる音が聞こえてくる。小川の水量は豊富で,そのせせらぎは四季折々に清涼感のある音色を奏でている。
この小川は,宿場町の通りであった「がいせん桜通り」の両側を流れる幅約60センチ,長さ500メートルの生活用水で,江戸時代末期から明治初期にかけてつくられたものだ。
昔は小川で食器や野菜を洗う風景があちこちで見られるなど,生活に密着していた。
現在は,洗い場に使っていたスペースに鯉を放しており,宿場の町並みにさらに風情を添えている。
平和への願いをこめて、世界に響きわたれ!!
所在地
広島県広島市
よく聞ける時期
*毎年8月6日の「平和記念式典」で鳴らされる鐘
*毎日訪れる人が自由に鳴らせる鐘
よく聞けるところ
平和記念公園内
解説
平和記念公園は,本川と元安川とにはさまれた広い公園だ。この公園は原爆の爆心地に近かったため壊滅した繁華街が,戦後,平和を祈念する公園として生まれ変わったものである。
平和の鐘は公園内に三つある。一つは広島平和記念資料館東館に展示されており,一年に一度,広島に原爆が投下された8月6日の平和記念式典で打ち鳴らされる。
もう一つは原爆死没者慰霊碑北側にあり,訪れる人が自由に打ち鳴らせる。さらに三つめの「平和の時計塔」の鐘(チャイム音)は,毎朝原爆投下時刻の8時15分に鳴る。
これら三つの鐘の音は,原爆でなくなられた人々の鎮魂と核兵器廃絶・恒久平和の願いを世界に向けて伝えている。
瀬戸内海の夕日をバックに鳴り響く
所在地
広島県尾道市
よく聞ける時期
毎日夕方の6時と大晦日の除夜の鐘に使用
*毎朝8時15分になる鐘(チャイム音)
よく聞けるところ
「文学のこみち」や「古寺めぐりコース」など
解説
千光寺の驚音楼は,急な坂の多い町,尾道市の千光寺山の中腹の崖にへばりつくように建つ。尾道のシンボル的な存在だ。
「音に名高い千光寺の鐘は 一里聞こえて二里響く」と言われるほど,遠く瀬戸の島じまにも聞こえたと伝えられる。今も毎夕6時,沈む夕日を背に鐘が鳴り響く。時計が一般的に普及するずっと以前から,鐘の音が1時間ごとに尾道の町の人々に時を告げていた。
現在では,除夜の鐘としても有名で,ここで新年を迎える人も多い。
千光寺は「古寺めぐりコース」にも組み込まれ,その鐘の音は,尾道を代表する音として親しまれている。
力強さと気品の漂う、昔懐かしい蒸汽機関車
所在地
山口県/山口市〜島根県/津和野町
よく聞ける時期
3月から11月の間のSL運転日
よく聞けるところ
JR山口線小郡駅,津和野駅間
解説
レトロな雰囲気の漂う,小郡駅1番線ホームを出発した,”貴婦人”ことC571「SLやまぐち号」は,一路津和野を目指してひた走る。「シュッシュッポポ,シュッシュッポポ」
昭和54年(1979)に山口線に戻ってきた蒸気機関車は,大人にはノスタルジアを,子どもたちには夢を与え続けている。
客席は1号車から5号車まで,展望車風,欧風,昭和風,大正風,明治風と,ロマンあふれる車両編成で,好みの時代を選ぶことができる。
時折「ボオーッ」という懐かしい汽笛を響かせながら,約2時間ほどで全長63キロの旅を終え,700年の歴史を持つ城下町,津和野の駅へとすべり込んでいく。
モクモクと白煙をあげて力強く走るさまは迫力があり,沿線各所は絶好の音風景だ。
渦潮の唸り声に吸い込まれそうな迫力
所在地
徳島県鳴門市
よく聞ける時期
春と秋の大潮時期
よく聞けるところ
観潮船に乗れば,間近で見て聞くことができる。
解説
渦潮が巻く鳴門海峡は,鳴門市と淡路島との間約1.3キロの狭い瀬戸だ。この海峡を境として潮の干満により,瀬戸内海側と紀伊水道側の潮位に差が生じて,地形の複雑さの手伝って渦潮ができる。
潮流の速さはふつう時速13〜15キロくらいだが,春と秋の大潮時には時速20キロにもなり,ゴウゴウと唸る渦の直径が20メートルにも達するという迫力である。
昭和60年(1985)には,鳴門海峡と渦潮をまたぐように,全長1629メートルの「大鳴門橋」が架けられた。この周辺は鳴門公園と呼ばれ,同6年(1931)に「史跡名勝天然記念物」に指定,同25年(1950)には「瀬戸内海国立公園」に編入され,観光地としても有名だ。
威勢のいい掛け声とお囃子が夏の夕暮れから始まる。
所在地
徳島県徳島市他
よく聞ける時期
7〜8月なかば
よく聞けるところ
徳島市内中心部の公園,広場など各所で開かれる
解説
徳島で,毎年お盆の8月12日〜15日の4日間,盛大に開かれる阿波おどり。7月ともなると,400連を超える踊りのチームは,本番に向けての練習に余念がない。太陽が西に傾きかけると,徳島市内のあちこちから,阿波おどりの三味線などのお囃子がリズミカルに聞こえてくる。
華麗でしなやかな女おどりや,力のある勇ましい男おどり,大人も顔負けの子供たちの元気なおどりなど,町はにぎやかに真夏を迎える。
ずっと古くから見慣れた風景,耳に馴染んだ太鼓や三味線の音色,徳島の人々にとって,ほかの何よりも夏の訪れを感じさせるものが,この阿波おどりである。
お遍路さんの杖と鐘の音に満願の鐘が尾をひいて
所在地
香川県さぬき市
よく聞ける時期
1年中,いつでも。春と秋はお遍路さんが多い。
よく聞けるところ
大窪寺境内とその周辺
解説
四国霊場八十八か所めぐりは,お伊勢参り,熊野詣でなどともに,江戸時代の庶民にとって大きな楽しみだった。今も白装束に菅笠,金剛杖を持ったお遍路さんが,行く姿は四国路の風物詩だ。
阿波,土佐,伊予を経た四国遍路は,讃岐から「涅槃の道場」と呼ばれ,山ふところに抱かれた大窪寺が八十八番最後の霊場となっている。参道に点在する遍路の供養墓に手を合わせながら,険しい山道を歩きつづけ,「りーん,りーん」と鳴る鈴の音は,ようやく結願の大窪寺へたどりつく。
満願の喜びを胸に,山門の鐘を打てば,「ごーん,ごーん」と山々に心地よく響きわたる。清らかな音が,長く尾をひく長尾の町である。
豊作祈願の放水とホタルすむせせらぎの音
所在地
香川県まんのう町
よく聞ける時期
毎年6月13日から1週間くらい
よく聞けるところ
満濃池堤防下の「ほたる見公園」
解説
満濃町は香川県の西南部に位置し,町内の山間部には「讃岐の水がめ」と呼ばれる日本最大の灌漑用ため池,満濃池がある。
満濃池の歴史は古く,弘仁十二年(821),空海によって修築されたと伝えられている。現在の満濃池は約3000ヘクタールの田を潤している。
毎年6月13日に行われる「満濃池のゆるぬき」とは,田植えを前に,池のゆる(取水栓)を抜く豊作祈願の儀式。勢いよく放出される水音は,豊作を祈る人々の心に響きわたり,夏の風物詩として知られている。
また,水が流れ行く堤防下は,「ほたるの里」として整備され,せせらぎの音を聞くことができる。
昔も今も太鼓の音が仕切る名湯の1日
所在地
愛媛県松山市
よく聞ける時期
年中無休で毎日・秋から冬の空気の乾いている時はよく聞こえる。
よく聞けるところ
道後温泉本館付近
解説
午前6時30分,道後温泉本館から威勢のいい太鼓の乱れ打ちの音が聞こえてくる。そして,開館を待ちかねた人々が朝湯につめかけて,あたりは活気づく。
日本最古の道後温泉は,全国でもベスト10に数えられている名湯だ。その昔,一羽の傷ついたシラサギが湯につかって傷を治したことから,湯治場として知られるようになった。さらに,夏目漱石著「坊っちゃん」が,決定的に道後を有名なものにした。
街は多くの宿が立ち並び,中心的な存在が,古風な明治建築の道後温泉本館だ。その屋上にある太鼓楼・振鷺閣が,明治27年,(1894)から道後の朝を告げてきた。あとは正午に12回,夕方6時に6回太鼓を打ち鳴らして時を告げている。
太平洋黒潮の豪快な波音が洞窟に響きわたる。
所在地
高知県室戸市
よく聞ける時期
1年中,いつでも。とくに波の高いとき。
よく聞けるところ
洞窟の中の音,ということなので…
解説
高知県の東南端に位置する室戸は,昭和2年(1927),日本八景のひとつに選ばれた。岩礁に砕け散るダイナミックな荒波,一面に漂う潮の香り,どこまでも高くどこまでも青い南国的な空。アコウ,アオギリ,ハマユウなど亜熱帯植物群落の自然美は,まさに南国土佐にふさわしいところだ。
御厨人窟は室戸岬の先端にあり,目の前には壮大なる太平洋が一面に広がっている。御厨人窟のなかでは,岩に砕ける波の音,海底から聞こえてくるような地響きにも似た音が響き,まさに大自然の力強さを感じずにはいられない。
千二百年前,弘法大師空海が悟りを開かれたのも,この豪快で厳しくも,美しい自然があったからであろう。
九州・沖縄

●博多祗園山笠の舁き山笠
一番山笠の「博多祝い唄」の大合唱で最高潮に!
所在地
福岡県福岡市
よく聞ける時期
(A)7月12日15時59分から「追い山ならし」
(B)7月13日15時30分から「集団山見せ」
(C)7月15日4時59分から「追い山笠」
よく聞けるところ
(A)「追い山ならし」と(C)「追い山笠」櫛田神社・地下鉄呉服町駅,祗園駅周辺。
(B)「集団山見せ」福岡市役所・地下鉄中州川端駅周辺。
解説
博多の夏は,祗園山笠で開ける。7月1日,10本以上の豪華絢爛な飾り山笠が博多の町を彩り,勇壮な博多祗園山笠が始まる。
夏に流行する疫病の退散を願って十三世紀に始まったもので,やがて町同士の争いから「舁き山笠」の競争がとり入れられたという。
「舁き山笠」は,祭が盛り上がり始める7月10日に満を持して登場し,山笠をかつぐ男たちの「オイッサ!オイッサ!」のかけ声が市内に響き,博多の町は山笠一色となる。
7月15日早朝「追い山笠」で祭は最高潮に達し,一番山笠だけに許される博多祝い唄の大合唱,舁き手たちの力強い「オイッサ!オイッサ!」のかけ声が町にひびき,祭は終わる。
そして,暑い,明るい夏が始まる。
古代の人々も聞いた鐘が現代のまちにも鳴り響く
所在地
福岡県太宰府市
よく聞ける時期
(A)毎月18日 午後1時(B)大晦日(除夜の鐘)*鐘の保護のため自由に撞くことはできない。
よく聞けるところ
観世音寺の境内
解説
太宰府は,学問の神様菅原道真公を祀る太宰府天満宮で有名だが,観世音寺も由緒深い。
天智天皇の創建と伝えられる観世音寺の梵鐘は,朱鳥13年(698)に鋳造された京都・妙心寺の鐘と兄弟鐘といわれている。
その形,大きさは妙心寺の鐘とほぼ同じだが,上下の唐草文や龍頭(吊り下げる部分)からみて日本最古の鐘と考えられ,国宝に指定されている。
この日本最古の鐘は毎月18日の午後1時に撞かれ,一三〇〇年の時を越えて,古代の人々も聞いた鐘の音が太宰府のまちに響きわたる。
「都府楼はわずかに瓦の色を看,観音寺はただ鐘の声を聞く」と菅原道真の詩句にもうたわれている名鐘の音色だ。
潮騒の中に聞こえる源平の合戦のトキの声か悲鳴か!?
所在地
山口県下関市
福岡県北九州市
よく聞ける時期
1年中,とくに春秋の大潮のころ
よく聞けるところ
門司側…和布刈公園観潮テラスと観潮遊歩道周辺
下関側…みもすそ川町みもすそ川公園,関門海峡早鞆信号所,阿弥陀寺町市民コミュニティー広場と阿弥陀寺公園
解説
関門海峡は,本州西端の下関市と九州東北端の北九州市門司区にはさまれた海域で,瀬戸内海と日本海を結ぶ役割の水路のため,海上交通の要衝として知られている。
昔から”早鞆の瀬戸”といわれた関門橋のあたりは,幅わずか700メートル,瀬戸内海と日本海の干満の差によって潮流は激変し,とくに潮流の速いところでは時速16キロにもなる。その海峡を1日大小700隻余りの船が往き交い,激しい潮流の音の中で聞こえる汽笛の交錯は,まさに海峡の音色そのものといえる。
源平の命運を決した壇ノ浦の合戦の古戦場,宮本武蔵と佐々木小次郎の決闘した巌流島など数々の歴史のドラマが繰り広げられたロマンあふれるこの海峡は,耳を澄ませば潮流と汽笛の中に往時の出来ごとがよみがえってくるようだ。
鉦や太鼓、笛のお囃子がからまり秋空にひびく
所在地
佐賀県唐津市
よく聞ける時期
11月2日(宵ヤマ)〜11月4日(くんち当日)
10月1日〜10月末日の夜(街角での練習風景)
よく聞けるところ
曳山展示場(唐津神社そば),年間を通して館内のビデオで放映している。
解説
唐津くんちは唐津神社の秋祭りで,十六世紀終わりに始まった伝統行事である。
最大の呼びものは曳山行列で,刀町の1番曳山「赤獅子」から14番曳山「七宝丸」まで,いずれも勇壮華麗な14台が登場する。高さ5.2メートル余り,重さは2トンから3トン,車輪をきしませ,町内を曳き回す。
一番の見どころは,氏神の休憩の場所となるお旅所への曳き込みで,ここが砂地であるため,車輪がめりこもうとする曳山を,曳子たちが一丸となって「エンヤ,エンヤ」の掛け声も勇ましく,ありったけの力をふり絞る。
せり囃子が一段と高まる中,祭りは最高潮に達する。
曳山囃子には「道ばやし」「せりばやし」「たてやまばやし」があり,各曳山ごとに囃子も微妙に異なっているのがおもしろい。
陶石砕き、ロクロ回し、窯焼きと磁器風鈴の静かな里
所在地
佐賀県伊万里市
よく聞ける時期
1年中いつでも
よく聞けるところ
伊万里市大川内山
解説
秘窯の里「大川内山」は,三方を切り立った山に囲まれ,山水画を思わせる山紫水明の地にある。江戸時代には鍋島藩窯として栄え,世界の最高峰と言わしめた”色鍋島””鍋島染付””鍋島青磁”の,名品を生み出している。
この歴史的文化遺産の保護顕彰と憩いの施設として整備されたのが「鍋島藩窯公園」で,大川内山を見晴らす丘陵地に広がり,園内には,焼き物の風鈴を吊るした「めおとしの塔」が立ち,澄んだ鈴音を鳴らす。
伊万里焼は,成形,乾燥,素焼,下絵付,施釉,本焼,上絵付,窯出しの多くの工程を行って,ひとつの伊万里焼ができあがる。この各工程において,陶石を砕く石臼の音やロクロを回す音,窯焼きをする音などが調和して,焼き物の美しさとともに優雅な音の世界をつくり出し,歴史と文化の香を満喫させてくれる。
地域の人々と共に生きる木と風のささやき
所在地
長崎県長崎市
よく聞ける時期
1年中,いつでも
よく聞けるところ
山王神社境内,2本の楠の木の下
解説
二本の大楠は,片足鳥居で有名な山王神社の境内にある。ここの1本足鳥居も片方の柱を原爆で吹きとばされたまま,五十数年間無言で立ちつくしている。
大楠は幹回り8メートル,6メートルと大きく,樹齢は五百年以上という。原爆で幹も枝も裂け,黒焦げとなり,枯れたかに見えたが,2〜3年後,奇跡的に芽吹いた時には,町の人たちは楠に抱きついて生きていることをよろこび合った。
今でも北側の幹は樹肌がむき出しになって炭化しており,幹は白蟻に食害されて樹勢が弱くなっている。”地域の大楠を守る会”の人たちは,募金活動をして,大楠の治療をしたり,被爆楠の苗木の配布をしたりしている。
大楠の木下に立つと,木の葉のざわめきとこどもたちの遊び声の中に,この地域を,何十年ものあいだあたたかく見守ってくれてきた大楠のやさしさが不思議と聞こえてくるような気がする。
「ワァァ」「オォ」…歓声と地響きが…
所在地
熊本県山都町
よく聞ける時期
田植え期間(5〜6月)は放水できないが,四季を通じて折々の風情が放水とマッチする。
よく聞けるところ
通潤橋の上
解説
空に架かる水路という形容詞がぴったりの通潤橋。この石橋は国重要文化財指定だが,百四十年間人々の生活を支えている。
放水は,もともと水管に沈殿した砂を放出するために考えられた。
ふだんは悠然と物静かなたたずまいだが,豪快な放水が始まるや,地響きにも似た勇猛な音が沈黙を破ってあたりの空気を一変させる。
水栓を抜く「コツコツ」という槌音に始まる感動の予感,栓が抜けた瞬間のほとばしる水しぶき,待ち受けた人々から湧き起こる歓声。さらに激しい水音は,虹の彩りを描きながら周辺に広がり,人々の喜びの声とハーモニーを醸し,石橋「通潤橋」の泰然自若,荘厳なる趣きが相まって「いのち」あふれる世界が創り出される。
人なつこい野生のイルカから自然との共生メッセージ
所在地
熊本県天草市
よく聞ける時期
1年中,いつでも
よく聞けるところ
天草の五和町通詞島の沖合一帯
解説
熊本県の三角町から天草五橋で天草へ渡ると,自然環境と文化雰囲気も一変する。砦ロマンを秘めた海と風土が殉教の歴史を語っているようだ。
天草下島の五和町通詞島の沖合の海域には,全国的にも珍しい野生のバンドウイルカが約300頭ほど生息している。
五和町の二江港から漁船にのって5〜15分ほど行くとこれらの野生のイルカに出会うことができる。
しぶきを上げて跳びはね,漁船の動きに合わせて真横についてくる愛嬌いっぱいの野生のイルカたちの生態と彼らの声を聞いていると,自然と人との共存の大切さのメッセージをイルカたちから受けとっているようで,何とも感動的な体験となる。
のどかに村里に聞こえる唐臼と水の音
所在地
大分県日田市
よく聞ける時期
1年中いつでも聞ける(ただし大晦日は休み)。音のある風景としてはまわりの新緑もよし,秋色の中でもよい。
よく聞けるところ
小鹿田皿山の川沿い
解説
山間に唐臼の音がこだまする民陶の里,小鹿田皿山の唐臼。ここでは三百年近い伝統ある小鹿田焼が匠たちの手で作り出されている。
皿山の唐臼は,竿と杵と臼からできており,竿は根元をくり抜き,水流を受けて先端の杵を動かして臼の中の陶土をつく。
「ギィー……,ゴトン」と響きわたるのどかな唐臼の音は,里の中央を流れる大浦川のせせらぎと調和して,静かな山里の自然の中で心をなごませる風物詩であり,音のご馳走だ。
唐臼は全国でも珍しい水力を利用した陶土粉砕機で,3〜4基連なったものが多く,現在は36基が動いている。
自然乾燥された原土は,この唐臼で細かく粉砕され,陶土として利用される。
息ながく、息をつめたり、風の演出いろいろ
所在地
大分県竹田市
よく聞ける時期
通年聞くことができるが,中秋の名月より晩秋にかけてが,とくによく聞こえて風情がある。
よく聞けるところ
岡城本丸跡
解説
松籟とは針のような緑の松葉が何千何万本と松の枝にしげり,松の横枝が風によって強い弾力をもって上下左右にゆれ動かさせる際に立てる複雑優雅な風の交響楽である。
岡城跡の本丸跡に,樹齢100年の松の老木が残っている。
岡城は大野川(白滝川)と稲葉川の深い渓谷を堀として断崖上に築かれた中川氏の名城だったが,明治4年(1900)に廃城,いまは石垣が残るのみである。
秋になると本丸跡の老松のまわりの木々が落葉をはじめ,松の緑は一段と映えるとともに,秋風を全身に受けた老松はすばらしい松籟を奏ではじめる。とくに秋の夜空に月が昇ると,城跡,松籟,月光が三重奏となり,まさに「荒城の月」の世界が現出する。
瀧廉太郎作曲,土井晩翆作詞の名曲が松籟の響きにのって聞こえてくるようだ。
滝壷に落ちる水流が無数の岩孔に反響して
所在地
宮崎県小林市
よく聞ける時期
1年中,いつでも
よく聞けるところ
三之宮峡遊歩道第8トンネルを過ぎ,「千畳岩」手前付近
解説
三之宮峡は,高さ30メートルをこえる「びょうぶ岩」,ほら穴の「カッパ洞」,龍伝説を伝える岩々などの奇岩と緑,清流が四季を通じて織りなす水と岩の自然境で,宮崎県の緑地環境保全地域に指定されている。
約1キロの遊歩道には”青の洞門”を思わせる11のトンネルがあり,絶好のピクニックコースだ。「櫓の轟」とは,渓流の落差が7メートルあまり,巨石に囲まれた滝壷に落ちる音である。まわりの場所ではふつうの沢音のように聞こえるが,滝壷をのぞきこむと淵にこもった滝音がとどろきわたることから,「櫓の轟」と呼ばれるようになった。周辺の渓流沿いでは,鳥のさえずりやカジカの鳴き声も楽しめる。
高原のしじまを破り、山々にこだまする鋭い声
所在地
宮崎県えびの市
よく聞ける時期
年中聞くことができるが,とくに秋には夕方から朝にかけて聞くチャンスが多い
よく聞けるところ
えびのビジターセンター近くの「ピクニック広場」や「えびの市営キャンプ場内」
解説
えびの高原は,霧島屋久国立公園の霧島連山北部,標高1200メートル一帯に位置している。大小の火山とカルデラ湖に囲まれており,山肌はモミ,ツガ,アカマツ等の針葉樹林や広葉樹におおわれて,四季折々の変化に満ちた色や模様を画き出す。
この地域一帯に生息する野生鹿は,日中は茂みで休み,朝夕に自分たちのテリトリーで餌をとる。
俳人飯田竜太はつぎのように詠んでいる。
「鳴く鹿の声を限りの山襖」
その鳴き声は,活動する夕方から朝方にかけて聞くことができ,とくに秋になると,雄鹿が雌鹿を呼ぶ「キーン,キーン」という鳴き声が高原の暗闇によく響きわたる。霧の深い日など,思わずばったり野生鹿に遭遇するチャンスもある。
大群になると鳴き声と羽音の一大合奏に!
所在地
鹿児島県出水市
よく聞ける時期
10月中旬から翌年3月中旬まで
よく聞けるところ
出水市荒崎地区(ツルの保護地区とその周辺)…「ツル観察センター(市営,有料)」は保護地区を一望に見渡せ,ツルの鳴き声を間近に聞くことができる。
クレインパークいずみ(出水市街地)…世界でも珍しいツルの博物館で,鳴き声や生態など数多くの資料が展示されている。
解説
出水のツルは,毎年10月中旬ごろ,出水平野(荒崎地区)に越冬のために渡来する約1万羽のナベヅル,マナヅルなどである。
渡来地の荒崎は干拓地ではあるが,周辺には人家も多く,警戒心の強いツルの大群をこのような人里近くで間近に見ることができるのは,世界でも珍しいことである。
渡来地のねぐらに集まるツルの群れの鳴き交わす様はまさに壮観で,また3〜4羽の家族単位でねぐらと市内各所の餌場とを行き交う,その飛行するツルの姿と時折鳴くツルの声は,この地の冬の風物詩となっている。
出水のツルと渡来地は特別天然記念物の指定を受けており,また,ツルと共存するという市民の心が,永年ツルを保護しているのである。
渓流の音の中を森林軌道のトロッコが走る
所在地
鹿児島県屋久島町
よく聞ける時期
1年中,定期運行の時
よく聞けるところ
森林軌道沿線
解説
屋久島は標高1935メートルの宮之浦岳をはじめ,洋上のアルプスといわれる急峻地形で,樹齢千年を越える屋久杉が林立する。なかでも樹齢7200年もの縄文杉の原生林をはじめとする極めて特殊な森林植生が,わが国初の世界遺産にも指定された。
屋久杉の山を流れる安房川とその支流の千頭川の渓流にからまるように,屋久島森林鉄道の軌道がある。大正後期に敷設され,屋久島の森林開発の動脈として活躍したもの。70年を過ぎた今日も,土埋木の搬出と屋久島電工の発電所管理用として,生きつづけている。全国でも唯一,現役の森林鉄道だ。
シーンと静寂が漂う森の中,小さなトロッコ電車がガタンゴトンと音を立てて橋を渡る。のどかなトロッコと渓流の複合音は,屋久島ならではのものだ。
マングローブ林から聞こえる鳥や動物たちの声
所在地
沖縄県竹富町
よく聞ける時期
リュウキュウアカショウビン(4〜9月の早朝と夕方),オオクイナ(1〜5月の夕方),リュウキュウコノハズク(通年の夜間),ヤエヤマハラブチガエル(4〜9月の夜間),リュウキュウクマゼミ(6〜9月の日中)。
よく聞けるところ
低林地やマングローブ林など。
解説
西表島は,石垣島の西方25キロ,島の90パーセントが原生林でおおわれていて日本最後の秘境ともいわれている。とくに,島の東部,古見集落の近くを流れる後良川は,河口にマングローブが広がり,その景観の美しさは島内でも指折りだ。
昼なお暗いジャングルには,サキシマスオウノキやサガリバナの群落などめずらしい植物が見られ,イリオモテヤマネコをはじめ,多種多様の生き物が,豊かな林で息づいている。隣接する古見の集落からも,耳をすませば,鳥や小動物たちの鳴き声を聞くことができる。これらの音は,昔から流域の住民にとって,季節の訪れや天候の変化などを知る大切な情報源であった。
最近では生き物たちの声を季節の風物詩として楽しむために,訪れる人が増えている。
沖縄の旧盆にくりひろげられる青年たちの勇壮な踊り
所在地
沖縄県うるま市
よく聞ける時期
旧暦7月15日・16日。本番の2ヶ月ほど前から始まる練習でも聞くことができる。
よく聞けるところ
沖縄本島
屋慶名…屋慶名集落全体。練習はJAゆいな与那城支所の駐車場と与那城小学校の運動場で行われる。
平敷屋…旧暦7月15日は拝所近くのタキノー公園で。16日は平敷屋小学校近く。
解説
エイサーは沖縄の旧盆に青年を中心として各地で踊られる,本土でいう盆踊りに相当するもの。
旧暦7月15,16日の夜,集落の青年男女が祭りごとを行う広場に集まり,無病息災,家庭円満,子孫繁栄などを祈念し,エイサーが披露される。
先導役の酒持ち,そして旗持ち,大太鼓,パーランクー(小型の太鼓,バチで打つ),踊り手,道化師の順で隊列を組んで入場。華やかな衣装を身にまとい,「エイサー,エイサー,スリエイサー」と,はやし言葉を合唱しながら,三線やパーランクーのリズムとともに,激しく体を動かしながら,勇ましく踊る姿は圧巻である。打楽器の音が心臓まで響いてくる。
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